メドベージェワ、トウルシンバエワ、そして紀平さん

世界選手権女子FSは報道されている通り、見どころが満載だった。

その中で3つ。

メドベージェワの表情、感情表現がここまで激しいものか驚きとともに競技にかける強い想いが痛いほどわかった。今季オーサー氏のもとに移籍し、エテリと決別することによって、彼女は背水の陣を敷いた。それこそ、もう後戻りのできない道だ。母国からのバッシングもあった。移籍時色恋沙汰のような報道すらされたが、そんな動機でロシアチームの大本山から離れられるわけがない。平昌五輪でザギトワに敗れた彼女は自らの欠点を根本から修正するためにカナダを選び、1年で結果を出してみせた。GPシリーズでは惨憺たるものでメドベもこれまでか?と思ったが、今回演技後の男前のガッツポーズと咆哮は見ていて爽快であった。とはいえ、もと世界女王。まだ、満足はしていないだろう。全体を通じて、おそらくは欠点と言われていたジャンプの精度は上がったのだろう。が、素人目に見てプログラムを通じてのスムースネスはいぜんと比べるとあまりにぎこちないものだった。かつての彼女は、そのプログラムを通じて一つの物語が見えるような滑りで、何度見ても飽きないスケーティングだった。彼女はそういうものを捨てたのか、表現できないレベルなのかわからない。今後を注目したい。

 

そしてトウルシンバエワの4回転。4大陸では失敗していたが、今回は本番で決めてきた。その他の表現、ジャンプも秀逸だった。女子の4回転時代をまさに告げる神演技であった。

ロシア女子に4回転を成功させている選手は複数いる。実際、これらジュニア選手は今季ロシアの国内戦を荒らしまくり、ザギトワでさえ下位に甘んじることがあった。来季ロシアのジュニアがシニアに移行してくることが予想されている。安藤さんがISU公認の4回転を成功させた最初の女子であったがシニアではそれを披露することができなかった成長期の体型変化になぞらえ、ロシアジュニアも1〜2年後には飛べなくなるのではという楽観的予想もされている。しかし、トウルシンバエワは19歳で実際に4回転を披露してみせた。来季は4回転がキーワードになるのだろうな、と思わずにはいられない快挙だった。

この新しい潮流に現在シニアで上位を張っている選手たちはどう対応するのだろうか?

ザギトワのように3Lz+ 3T 3Lz+3Lo のように高度な3回展コンボを熟成させることで対応するか、4回転を導入するか、あるいは3Aを習得するか。いずれかのオプションを選ばないと女子240点時代に対応できないだろう。それぞれの選手がどう対応するか、来季前半は大変なことになるだろう、と思う。それとともに増えるであろう怪我。男子でも、羽生選手、宇野選手も4回転にまつわる足首の怪我に悩まされている。女子にも避けられない試練が訪れるだろう。これが健全とは言えないが、たとえば体操の世界でも長高難度の技が一般化する過程で怪我はつきもの。競技人口が少ないので表に出ることが少ないだけだ。

怪我を理由に高難度化を懸念する意見も聞くが、この流れをISUとして止めるようなことがあれば、プルシェンコが黙ってはいまい。

 

そして、紀平さん。今回の成績は彼女の今までの優勝パターンのスタンダードだった。結局GPファイナルが出来すぎだったのだ。SPの3Aの成功率が低い理由は僕にはわからないが、なんとなく精神的な問題では、と邪推している。基本的な技術はおそらく完成しているのだから、どうしたら成功率を上げられるのか、彼女の内面的な問題だろう。

すべてクリーンに成功させた場合、3A3回で240点が可能になるが、4回転を加えることによってバランスが崩れないか心配だ。FSの単発3回転を4回転にアップグレードしたとしても、4〜5点の上乗せ。まずは3Aの精度を上げたほうが効率的かも。その上で4回転を伺うのがいいと思う。既におおよそ完成しているようだが、プログラムに入れた場合、加点の熟成3回転と、減点の4回転、どちらがいいのか?4回転を含んだコンボができれば絶対組み込むべきだろう。と、私の妄想は膨らむ。

 

それにしても、来季まで情報がほとんど無くなることを思うと、どうすればいいのだろう。

テニスのお二人もこの数戦を見るとスランプ気味だし。

野球好きでもないし。

体作りでもしますか。