紀平さんのLz

   今シーズン紀平さんはロシアの3狂と互角以上の戦いができていた可能性があった。もし彼女が9月に足首を痛めていなければ、だ。

 振り返ってみると、昨年のNHK杯での彼女のFSのTESは87点だった。これはLzを含めた3A2本が成功した極上の演技だ。最近では彼女はFSでPCSを概ね73点は稼ぐから、昨年とは大分様子が変わってくる。今、Lzを含めた構成でノーミス演技をすれば単純計算でFS160点を上げることができよう。さらに、SPでやはりLzを含めたノーミス演技をすれば彼女は83点稼ぐので、トータル243点。4回転がなくてもここまでできるのだ。それほど今シーズンの3Aの安定感は半端ないではないか。少なくともここまでの戦いぶりを見る限りもはや3Aが成功するかしないかという次元の話は過去のもの、と思う。あまりにもサラッと跳んでいるので、本当に3Aなのか?というほどのあっけなさすら感じるが。果たして、彼女の故障はどれほどのものかは推し量りようもないが、フィギュアには事実オフシーズンもなく、完全休養をすれば、今度は元に戻すのに大変な労力が要るのだろう。この辺は、数ヶ月を氷上トレーニングせずイメトレと体力維持だけに努めてオリンピック本番ギリギリに間に合わせた羽生さんのやり方を学んだらどうだろうか?Lzは彼女にとって、最も得意なジャンプの一つでもあるし、その重要性は当然理解されていよう。私ごとき素人がごちゃごちゃ言わずとも。

 多くのファンもその事がわかっているので、4SよりもLzだろう、と声を上げる。

 

 ただ、Lzを含めた構成でおそらく240点台の前半が限界ということを、紀平さんはわかっているのだろう。今は4Sの習得に力を入れているが、彼女は4Tもある程度ものにしてきている。Lzがなければ多種類の4回転を実装しないと旨味はない。いずれ、女子でもSPで4回転が解禁になる日がやって来よう。それが北京五輪の前なのか後なのかはわからない。その時にはロシア勢がSPに4回転を容赦なく組み込んで来るだろう。その時他の国の選手はどこに立てばよいのか途方にくれるだろう。怪我の危険があるから多回転は禁止すべきだという巷の意見も聞かれるが、これは競技である以上技術の進歩を止めることはできないだろう。その日を見越したら、今のうちに4回転に挑戦するのはありだ。これは、この競技を続けていこうとしているすべての国の選手に突きつけられたロシアからの宿題だ。

 

 さて、GPファイナルまで1ヶ月。紀平さんは4Sをプログラムに入れることが果たしてできるのだろうか? 個人的にはまずは極上のLzを戻して240点超を果たしてほしいと思っているが、、、